サイエンス

「ホッピングのバネ」を磁石に置き換えることは可能なのか?


強力なネオジム磁石などを販売しているK&J Magnetics, Incのチームは、ユーザーから「磁石の反発力を利用してバネの替わりにすることができるのか?」という問い合わせを受けていたとのこと。そこで開発チームは、実際にホッピングのバネを分析して「ホッピングのバネを磁石に置き換えることはできるのか?」という実験を行いました。

Magnetic Pogo Stick
https://www.kjmagnetics.com/blog.asp?p=pogo-stick-spring

チームは古いホッピングを使ってさまざまな検証を行ったそうで、その様子をまとめたムービーがYouTubeで公開されています。

Magnetic Pogo Stick?


1本足でピョンピョンとジャンプするホッピングには、衝撃を吸収してジャンプするためのバネが付いています。検証チームはホッピングに物差しを取り付け、体重150ポンド(約68kg)の成人男性がホッピングを使用した時にどれほどバネが圧縮されるのかを測ったとのこと。まずは成人男性が全体重をホッピングに預けたところ、バネはおよそ2インチ(約5cm)ほど縮みました。


次に、普通に体重をかけた状態から……


勢いをつけて思い切り圧縮。


ほぼ限界までホッピングを押し込むことができました。


この状態だと、バネはおよそ7インチ(約18cm)ほど押し込まれたそうで、バネにかかった負荷は実に500ポンド(約230kg)を超えるとのこと。


検証チームはバネを磁石に置き換えられるのかどうかを試すため、2インチほどの直径を持つ「RYO46」というリング状のネオジム磁石を用いて68kgの成人男性の体重を支えてみることにしました。RYO46を4個ずつ棒に通して重ねて反発させ、上板が中に浮いた状態を作り出します。その上にゆっくりと体重をかけていくと……


全体重をかけても磁石がくっつかずに浮いた状態を保つことができました。多少勢いを付けて踏み込んでも磁石はぶつからず……


微妙に空間が空いたまま。


しかし、勢いよくジャンプしてみたところ、やはり磁石の反発力だけでは耐えきれずに、磁石同士がぶつかってしまいました。


残念ながら、「実物大のホッピングのバネを磁石に置き換えようとした場合、かなり強力な磁石を大量に使用しなければならず危険」という判断のもと、今回は8分の1スケールのミニチュアホッピングを使用することにしました。


バネを磁石に置き換えられるかどうかを調べるために、まずは「バネにかかる力はバネの伸びる距離または縮む距離に比例する」というフックの法則を理解する必要があります。今回検証チームが使用したバネの「ばね定数」は1インチ(約2.5cm)あたり8ポンド(約3.6kg)。つまり、バネを2インチ縮めた時にバネへかけられた力は2×8=16ポンド(約7.2kg)となり、バネを0.5インチ(約1.3cm)縮めた時にかかった力は0.5×8=4ポンド(約1.8kg)となります。


また、ホッピングの場合は最初の段階でバネが少し縮んでいます。それを再現するため、検証チームはもともと約2.9インチ(約7.4cm)のバネを長さ2.4インチ(約6cm)に縮めた状態で、ミニチュアホッピングにセットしたとのこと。


これによりホッピング自体に力が加えられる前から、バネにはある程度の力が加えられた状態になります。グラフにするとこんな感じ。


ミニチュアホッピングのバネを磁石に置き換えられるのかどうかを調べるため、チームはRC44という直径0.75インチ(約1.9cm)のリング状ネオジム磁石2個を、磁石同士が反発するようにしてミニチュアホッピングにセットしました。


その結果、ミニチュアホッピングが縮んだ距離と加えた力の関係をグラフに表したのがコレ。赤い線がバネ、青い線が磁石を表しています。磁石はホッピングを押し込んでもほとんど抵抗せず、およそ1.5インチ(約3.8cm)ほど押し込んでからようやく強く反発し始めました。バネは加えた力と縮んだ距離が直線的なグラフを描くのに対し、磁石では非常に急なカーブを描いています。


続いて検証チームは磁石を3個に増やしました。


ピンク色の線が磁石3個を表しています。全体的に少しずつ赤い線に近づいており、このアプローチが正しいように感じられます。


さらに磁石を4個に増やして検証。


バネの線グラフに近づきつつあるものの、全ての領域でバネよりも加えられた力に対する移動距離が長いことがわかります。また、磁石を増やすことによってホッピングの物理的な移動可能部分が減るという問題も発生しました。磁石を4個重ねた段階で、完全に縮められた磁石の長さが完全に縮んだバネの長さと等しくなりました。


磁石を5個に増やすと……


ホッピングが縮む限界距離が1.25インチ(約3.1cm)ほどになりました。これでもまだバネよりも加えられた力に対する移動距離が長いまま。


最後に、磁石を6個に増やしてみました。ホッピングの構造上、これ以上の磁石を入れることは非常に難しくなります。


すると、ようやく一部分ですがバネよりも強い反発力を持つゾーンが現れました。


以上の実験から、力に対するバネと磁石の挙動は大きな違いがあるため、バネの持つ反発力を磁石の持つ反発力に置き換えることは難しいと考えられます。もちろん用途にもよりますが、少なくともホッピングのバネを磁石で代替しようとする試みは、うまくいかないだろうと検証チームは結論づけました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik