サイエンス

「音響攻撃」と非難されたキューバ駐在員の謎の健康被害は「蚊の殺虫剤」が原因だという研究結果


キューバ駐在のアメリカ外交官が脳に謎の損傷を負ったり、頭痛やめまいといった症状を呈したりといった報告が2017年以降報告されており、2019年にもカナダの外交官に謎の脳損傷が確認されたと発表がありました。3年を経ても原因が解明されていないこの症状について、新たな研究で、蚊に対する殺虫剤が原因だと主張されています。

Étude du Centre de traitement des lésions cérébrales de l’Université de Dalhousie | Hearing Loss | Hearing
https://www.scribd.com/document/426438895/Etude-du-Centre-de-traitement-des-lesions-cerebrales-de-l-Universite-de-Dalhousie?secret_password=tbByvDeI0WNMCenpPmRT

Havana syndrome: Exposure to neurotoxin may have been cause, study suggests | CBC News
https://www.cbc.ca/news/canada/havana-syndrome-neurotoxin-enqu-te-1.5288609

Mosquito fumigation may have caused mystery 'Havana syndrome', study says | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2019/sep/19/havana-syndrome-mosquitos-cuba-diplomats

2017年、キューバの首都ハバナに駐在しているアメリカやカナダの外交官から頭痛、めまい、難聴、脳の損傷といった健康被害の報告が相次ぎました。ハバナ症候群と呼ばれる症状の原因はキューバによる「音響攻撃」だと判断したアメリカは在キューバ大使館の職員を最小限に減らしましたが、2019年になってもはっきりとした原因はわかっていません。

「音響攻撃」が報告されたキューバのアメリカ大使館では一体何が起こっていたのか? - GIGAZINE


ハバナ症候群の原因が「コオロギの鳴き声」や「集団ヒステリー」だとする主張もありますが、新たな研究では、蚊の燻蒸(くんじょう)に使われた薬剤の神経毒が原因である可能性が示されています。燻蒸とは、害虫駆除や防カビ、殺菌のために気体の薬剤を対象に浸透させる方法をいいます。

この研究を行ったのは、カナダの外務省が組織したダルハウジー大学のBrain Repair Centreとノバスコシア州保健局の研究者チーム。研究者はまず、被害を報告した駐在員の脳が、記憶や集中、睡眠サイクルといった機能をつかさどる部分に損傷を受けていることを発見しました。これらの神経系に損傷を与えることができる毒は限られており、主に殺虫剤や農薬、有機リンに使われています。


研究者はその後、ハバナに住んだことがないコントロールグループを含む26人の被験者を対象に、さらに調査を進めました。血液検査や脳の画像検査は、キューバに駐在していた外交官やその家族に対して行われたほか、キューバに行く前・帰ってきた後というタイミングで行うことで、脳の変化をしっかりと観察できたそうです。

同様の神経ガスの被害が続出した事件としては、1995年の地下鉄サリン事件が挙げられますが、地下鉄サリン事件の被害者は高用量の神経毒にさらされていたのに対し、ハバナ症候群の被害者は低用量の神経毒にさらされたため、死者が出ずに頭痛やめまいといった症状が出たとみられています。

研究者が発見したところによると、2016年、ジカ熱の流行を受けてキューバは蚊に対抗するためのキャンペーンを実施しており、多い時は大使館の内外で2週間ごとに殺虫剤がスプレーされたとのこと。実際にハバナで症状を訴えたカナダ人の被験者を毒物分析したところ、ピレスロイドリン酸エステルといった殺虫剤に含まれる化合物がが検出されました。また症状を強く訴えた人と、殺虫剤が散布された数の間に相関関係もみられたと研究者は報告しています。

これまでにはハバナ症候群の原因として、集団ヒステリーの可能性も主張されましたが、精神科医であり今回の研究に参加したシンディ・カルキン氏はその可能性を否定しています。

カルキン氏は被害者にインタビューを試みましたが、集団ヒステリーの証拠は見つかっていないそうです。また集団ヒステリーという可能性があがってきたのは、根本的な医学的原因が見当たらなかったためであり、今回の研究で殺虫剤という医学的証拠が見つかったことから、集団ヒステリーの可能性は低いとのことです。


論文の筆頭著者であるアーロン・フリードマン氏は、この研究の重要な点は駐在員やその家族だけでなく、より広範な人に対する健康上の問題を提起したところだと述べています。研究チームは今後、より毒性の強い薬剤を確認し、どの程度の影響があるのかを調べる見込みです。また、キューバ政府と協力して、キューバの人々に同様の症状がないかを調べる予定だとされています。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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